【一万円札じゃ腹は膨れない】第4話:FP2級、取ったのに使えなかった男

投資・お金

In my late twenties, I passed the Financial Planner Level 2 exam in Japan — a qualification that covers insurance, taxation, investment, and estate planning. I was proud of myself. I thought I finally “understood money.” But looking back now, I had confused knowing with doing. I used the knowledge to avoid bad insurance policies, but when it came to saving and investing, I did almost nothing. This is the story of a man who passed a financial exam and still managed to waste years of his financial life.

資格を取った夜、僕は焼肉に行った

FP2級、合格。試験結果を見た瞬間、僕がやったことを正直に言う。祝杯と称して、一人で焼肉を食いに行った。ひとり焼肉が流行る前の時代に、少し恥ずかしい思いをしながら。

「これで俺もお金のプロへの第一歩だ」と思った。本気で思っていた。資格のテキストをパラパラとめくりながら、ライフプラン、保険、税金、金融商品、不動産、相続……お金のすべての分野が網羅されている。これを制した俺は、もう怖いものなしだ——と。

でも、その夜の焼肉代を、僕はクレジットカードで払った。翌月の引き落としをなんとなく頭に入れながら。お金のプロへの第一歩を踏み出した夜に。

FP2級テキストを片手に焼肉を一人で食べるゆうご。資格取得を喜んでいるが、財布の中身は変わっていない。

【前回のおさらい】銀行預金も「投資」だと気づいた話

前回(第3話)は、20代のゆうごが友人から「貧乏人は浪費する、金持ちは投資する」という言葉をもらいながら、5年以上も行動に移せなかった話をしました。バイクに乗り、温泉に浸かり、旨いものを食べる。お金はそこに消えていった。

でも最後に、一つの気づきがありました。銀行にお金を置いておくことも、リスクとリターンを伴う選択のひとつだ、と。「何もしないこと」は「安全な選択」じゃない。お金への「意識」こそが、投資の出発点だと悟ったんです。

そして30代を前に、僕はFP2級の勉強を始めました。「意識」を「知識」に変えようとした。それ自体は、間違いじゃなかった。間違いは、その先にあったんです。

FP2級で本当に得たもの

FP2級を取ってよかったことは、確かにありました。まず、お金の全体像が見えるようになった。税金の仕組み、社会保険の構造、生命保険の種類、住宅ローンの金利計算。これらをバラバラに覚えるんじゃなく、「人生のお金の流れ」として把握できるようになった。それは今でも財産だと思っています。

具体的に活きたのは、保険の見直しです。会社の健康保険組合の制度を細かく調べた。高額療養費制度があるから、民間の医療保険に入りすぎる必要はない。掛け捨ての生命保険も、独身の自分には当時ほとんど不要だった。不要な保険に月々1〜2万円払い続けている同僚を横目に、僕はすっきりとした保険構成を組めた。ここは、FP2級が直接役に立った場面でした。

「知識」が「節約」に繋がった。それは紛れもない成功体験です。でも——それだけで終わってしまったんです。

投資と貯蓄については、なぜか頭が止まっていた

FP2級のテキストには、投資のことも書いてあります。NISA(当時はまだ制度が今と違った)、株式、投資信託、ポートフォリオの考え方。一通り勉強した。試験でも解けた。でも、自分のお金をそこに動かそうとは、なぜか思えなかった。

貯蓄に至っては、もっとひどい。FPの学習で「収入の何%を貯蓄に回すべきか」というモデルケースを何度も読んだ。「手取りの20%を先取り貯蓄する」というセオリーも知っていた。知っていたのに、僕の口座には毎月、見事に何も残らなかった。

なぜだったのか。今なら少しわかります。知識は頭に入っていたけれど、「自分ごと」になっていなかったんです。教科書の中の「30歳・年収400万円の田中さん」のライフプランは立てられる。でも「ゆうご、お前のライフプランはどうなんだ」という問いには、目を背けていた。

「知っている」と「やっている」は、まったく別の生き物だ

これは、今でも僕が投資について話すとき、必ず思い出すことです。知識と行動の間には、見えない川が流れている。川の存在は知っている。橋の渡り方も知っている。でも、足が川岸から離れない。

FP2級を持った僕は、岸の上でいろんな橋の知識を増やし続けていた。「つり橋もある」「石橋もある」「渡り方のコツはこうだ」と。でも川を渡っていなかった。

「知識は武器になる。でも、抜かなければ意味がない。」

後になって、ある投資家のエッセイでそういう言葉を読んで、胸を刺されたような気持ちになりました。まさに俺のことだ、と。FP2級という剣を腰に差して、抜かないまま歩き続けていた。それが、20代後半の僕の姿でした。

資格は「地図」に過ぎない

誤解してほしくないのですが、FP2級を取ったことは後悔していません。お金の全体像が見えたこと、保険を適切に見直せたこと、その後の投資判断の基礎になったこと——確実に意味があった。

ただ、資格は地図だったんです。地図を持っていても、歩き出さなければどこにも着かない。地図を眺めてうなずいているだけでは、山には登れない。バイクで言えば、ツーリングマップルを全ページ読んでいるのに、一度も出発しない状態です。そんなの、ライダーじゃない。

当時の僕は「地図を持っている安心感」の中に逃げていた。FP2級があるから、いざとなればわかる。いざとなれば動ける。でも「いざ」は、自分で引き寄せなければ来ないんです。

もし、あのとき一つだけ行動していたら

仮に、FP2級を取った直後に一つだけ行動していたとしたら——これは仮定の話ですが——毎月1万円を積み立て投資に回していたら、どうだったか。それから10年以上が経った今、複利の力でどれだけ変わっていたか。計算するのが怖いくらいです。知識を得た直後こそ、行動へのエネルギーが最も高い瞬間だったのに、僕はそのエネルギーを焼肉で消費してしまった。

これは自虐じゃなく、本当の話として伝えたい。知識を得た瞬間の熱は、時間とともに冷める。「いつかやろう」という気持ちは、やがて「まあいいか」に変わる。行動はできるだけ早く、小さくでいい、始めることが重要だった。

それが、資格を取ったのに使えなかった男が、30代半ばになってやっと学んだ教訓です。

この話で、あなたに持ち帰ってほしいこと

「知っていることと、やっていることは違う。」

これが、第4話で僕が伝えたい、たった一つのことです。FP2級じゃなくてもいい。本を読んだ、セミナーに行った、YouTubeで勉強した。それは素晴らしいことです。でもその後、何かひとつでも動きましたか?

証券口座を開いてみるだけでもいい。積み立てNISAの設定を調べるだけでもいい。保険証券を引っ張り出して眺めるだけでもいい。知識を「使う」という経験が、次の行動への回路を開く。僕はその回路を開くのに、無駄に数年かかった。あなたには、もったいない時間を使ってほしくない。

資格は取ることが目的じゃない。使うことが目的だ。それだけを、覚えていってください。


── 第4話 おわり ──

📖 次回予告|第5話

「やっと始めた投資は、投資というよりギャンブルだった」
FX。レバレッジ。含み損。ロスカット——。
知識だけを持ち、覚悟を持たなかった男が飛び込んだのは、想像よりずっと深い沼だった。

次回:FXという名のギャンブル

連載「一万円札じゃ腹は膨れない ── ゆうごの投資哲学」第4話 / 全12話
第二部:失敗

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